「原油17年ぶり安値」の裏で何が起こっているのか
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世界情勢
こんにちは。ファイナンシャルアドバイザーの大崎です。
今朝のBloombergに「原油が17年ぶり安値、新型コロナで需要減-サウジとロシア価格競争」との記事がありました。
ニューヨーク原油は、一時20ドルを割り込み、19.92ドルをつけたそうですが、ヤバいですね。
原油価格が「価格戦争」に突入しているのは、このブログでもお伝えしてきておりますが、
「原油戦争」サウジアラビアとロシア、米国による価格戦争に突入
原油急落のキッカケとなったのは、今月6日のOPEC(石油輸出国機構)と、ロシアなど非加盟産油国からなる「OPECプラス」の会合で、協調減産の協議が決裂したことです。
理由としては、サウジアラビアとロシアが相場安定を優先して協調減産を続けてきている間に、米国がシェールオイルの増産を続けており、それをロシアが許せずに、減産を拒否したとされております。
原油価格の低迷が長引けば、シェールオイル企業の破綻が増えてくることや、ハイイールド債(=投機的格付債・ジャンク債)を利用してその企業へ投資している金融機関や投資家にお金が戻って来なくなり、リーマン・ショック級の金融危機に発展する可能性があるということは、お伝えした通りです。
しかし、それだけではありません。
新型コロナウィルスの影響で需要が減退し、ただでさえ、原油収入が減る中で、価格競争で譲らない姿勢を取っているのは、市場シェア拡大のためや米国のシェールオイル企業を潰すことだけでなく、サウジアラビアは、この機会にイランを潰したいと考えているからだと思います。
イランも原油の生産量の多い国であり、現在、厳しい経済情勢にあるため、一段と苦境に立たされることになります。
今年1月3日に、米国がイラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を指揮してきた「ソレイマニ司令官」を無人攻撃機のミサイルで暗殺したことを覚えている方もいるかと思います。
イランも司令官殺害に対し、すぐに米軍のイラク駐留基地にミサイルを十数発打ち込むなど、報復攻撃をしましたが、死者は出ませんでした。
それは、事前通告により、米軍は防空壕に避難していたからです。
軍産複合体などの国際金融資本の考えはそうではないですが、トランプ大統領もイランも本気で戦争をしようとは考えていないですし、イランでは米国主導の制裁により、金融危機に陥る可能性も指摘されるほどの厳しい経済情勢であり、国内で大規模なデモが発生するなど、戦争は避けたいはずです。
ただ、国内への体裁を保つ必要があるために、(事前通告の上)報復攻撃したのです。
もっと言うと、トランプ大統領が、歴代の大統領が避けていたイラン司令官の殺害を決断したのは、米国が石油の「純輸出国」となり、中東へのエネルギー依存度が減ったためであり、シリアからの撤退を発表したのもそうでしょう。
また、以前のブログ「やはり世界は「国際金融資本」が操っていた」で述べましたが、米国は中東の石油を必要としていたので、強大な軍事力をバックにサウジアラビア含めた中東を守り、その対価として、石油取引をすべて米ドル建て取引にするという「ペトロダラー」という仕組みを維持してきたわけです。
サウジアラビアが、原油価格急落で自身の首を絞めることになっても増産しようとしているのは、この機会にイランを潰したいと考えているからであり、先述の通り、米国がサウジアラビアを守ることから撤退しようとしたため、米国に対する仁義が必要なくなったからでしょう。
で、金融危機に発展する以外に何がヤバいかというと、イランがより追い込まれた状況になり、窮鼠猫を噛む(戦争)可能性も出てきたことです。
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